名古屋南労働基準監督署長(C電力)事件
名古屋高裁 2007.10.31
うつ病を発症し、これによる心神耗弱状態の下で焼身自殺をした男性の遺族が労災認定を求め遺族補償年金及び葬祭料の支給を請求していたが、名古屋南労働基準監督署長は男性の死亡を業務外と判断したため、審査請求・再審査請求をした。しかし、いずれも受理後3ヶ月を経過しても決定・裁決がなされなかったため、労災不支給決定の取り消し求める訴えを裁判所に提起した。一審・控訴審とも原告である遺族側の請求を認容され、確定している。
事件のあらまし
C電力において技術職として勤務していた男性は、平成9年8月にデスクワーク中心の業務に従事することとなり、平成11年8月には主任に昇格した。
男性はもともと主任になることに不安を抱き、実際にも主任として部下の仕事のチェックや指導をしなければならないことは分かっていながら、自己の仕事に追われて十分な仕事ができなかったが、上司が男性の昇格に際して、書き直しまで命じて男性が能力において不足することを明記させ、更に、「主任失格」「おまえなんか、いてもいなくても同じだ」等と叱責していた。
また、この上司は、結婚指輪を身に着けることが仕事に対する集中力低下の原因になるとして、男性に対してのみ、複数回、結婚指輪を外すよう命じていた。
なお、この上司は業務に精通していたが、日頃から大声、きつい口調であり、課員を呼びつけて他の課員に聞こえる状況で指導することで反感を持たれることも多かったが、指導時の口調は好き嫌いにより強弱があったとされる。
裁判の結果
上司の行為は、何ら合理的理由のない、単なる厳しい指導の範疇を超えた、いわゆるパワーハラスメントであり、相当程度心理的負荷の強いものであった。男性は、几帳面、真面目で責任感が強く他人の悪口を言ったりしない性格であったが、このことが直ちにうつ病を発症させる脆弱性につながるものではなく、また精神障害と関連する疾患についての既往歴はなかったことから、一般的平均的労働者の範囲内の性格傾向である。
よって、男性のうつ病発症と業務との間には相当因果関係が認められ、また、うつ病の典型的な抑うつエピソードに自傷や自殺の観念や行為が含まれていることから、うつ病と自殺との間にも相当因果関係を認めることができることから、男性の死亡は業務起因性があるものと判断された。
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